うちのこ

2015年4月からワーキングマザーとして働くハハがお仕事や子育てやそれ以外をつづります

捨てられなかったもの

1年ほど前、実家が引っ越しをするので荷物の整理をした。

 

学校に通ってまで取ったDTPの資格試験のテキストとか、取ろうと思って取らなかった色彩検定の参考書とかはあっさり捨てられた。昔勤めていた会社で描いたボタンやワッペンのCGイラストも捨てた。

 

今のようにペーパーレスでない時代だから紙が多くて、それをバンバン捨てていくのは無駄な部分が削ぎ落とされていくようで心地いい。

 

昔にひととおり整理したつもりだったけど、当時は捨てられなかった。過去にがんばった自分をまだ取っておきたかったんだと思う。でも、もうそこがなくても大丈夫だから捨てられた。

 

手がとまってしまったのは、昔集めた紙モノたち。棚を2つ、引き出しを1つ、机の上の半分。2畳ほどの勉強部屋で、それらはたくさんのスペースを占拠していた。

 

中学校時代からフライヤーとか、冊子とかが大好きで、CDショップや雑貨屋さんでいろんなものを集めてはニヤニヤしていた。最高潮に熱く眺めているのはその手にとった瞬間で、後で見返すことはほとんどなかったけれど、その時にいいな、と思って手にとった幼い自分の感性をこの時はまだ捨てられなかった。

 

理論的に合理的に効率的に判断できることが賢いし、そういうふうになりたいと思った時期が長かったけど、ここ最近「好き」とか「直感」とかをもっと大事にしたいと思うようになっている。

 

初めての子どもが生まれ、育児仕様に自分を組み替えていく中で、自分の「好き」がわからなくなっていたから。

 

この「かつて好きと思ったものたち」の中に、自分の軸があるんじゃないか。ひとつひとつ見返せば何か見つかるんじゃないか。そう思ってこの時は捨てなかった。

 

だけど、それから3週間後。

 

引っ越し時期は迫り、そうそう実家にも帰れず、母親には早く処分しろとせっつかれ、

 

結局ぜんぶ捨てた。

 

トム・クルーズがなまめかしくてドキドキした「インタビュー・ウィズ・バンパイア」の映画チラシも、

フランスっぽい空気感が好きで立ち寄るのが好きだったアフタヌーン・ティーのリーフレットも、

紙の手触りが好きで王子製紙のペーパーライブラリーで200種類コンプリートしたサンプル紙の束も、

フォントの本も、

 

ぜんぶ捨てた。

 

 

あれから1年。

 

捨てた直後はやっちまったと後悔したけど、でも全然大丈夫だった。好きだと感じた気持ちは意外としぶとく自分の中に残っている。

 

中学校時代の自分にひとこと声をかけるなら、リーフレットやチラシばっかり集めてないでコンテンツそのものに手を伸ばせ、と言うだろう。お金はないけど、時間はたくさんあった。気兼ねなくあーだこーだ言い合える友達もいた。そうしたらきっとあの紙モノたちはここまで発酵せずに自分の中に取り込まれていったんじゃないかな。

 

あの頃憧れたフランスは、30歳をとうに超えた今でもやっぱり好きだった。眺めているだけじゃなく、今年は好きなものを手に入れてとことん愛でようと思う。あーだこーだ友達と言い合ったりしようと思う。時間の制約はあるけど、今はインターネットがあるのだ。

 

とりあえず、ずっと憧れてたセントジェームズのボーダーを買って着てみた。みてるだけの時よりも、もっと好きになった。