うちのこ

2015年4月からワーキングマザーとして働くハハがお仕事や子育てやそれ以外をつづります

今しかない、はすぐ忘れてしまう

川上未映子さんの『きみは赤ちゃん』を読んだ。電車の中で泣きそうになるわ、笑いをこらえきれずニヤニヤしてしまうわ、いい本だった。産後のあれやこれやって渦中にいるときはグラグラと煮えたつような気持ちなのに、時間がたつと「あれ、どうだったっけ…」ってなりがちじゃないですか?大変だったのは覚えてるけど、詳しいところは忘れちゃう。そこを細やかに表現してくれて、あー!そうだった〜といちいち共感できた。関西弁がやわらかくてテンポがよくて、関東出身としてはうらやましい。

 

一番好きな部分は、夜中、授乳をしながらもオニ(お子さんの愛称です)くんの顔をじーっとみて、湧きあがる感情をかみしめているところ。産後すぐの夜中の授乳って孤独な戦いで、ほんとツラくて私もおっぱいをふくませるのに1時間格闘してうまくできなくて泣いたりしてたのだけど、ふとした瞬間に「あれ、いまこの子の表情みているのは全世界で私だけなのでは…?」とありがたいようなおごそかな気持ちになっていたのを、思い出した。


子どもと過ごしていると、「今」をものすごく感じられる。あ!と指さした先の昼間の月や、鼻の穴にティッシュをつめてデヘヘと笑ってる顔や、「だーいすき」といってほっぺにヨダレつきのキスをかましてくれた時のやわらかさ。夜寝てる時にぎゅうぎゅうとくっついてくる身体のあたたかさ。ごはん前におかし食べたいのっ!と言ってきかない時のへとへとな気持ち。

 

ひとつひとつは些細なことなのだけど、そんなことを積み重ねていって1年が過ぎる。子育てっていろんな面があって、たいへんなところにフォーカスするとそりゃもうウンザリしちゃうけど、日常の些細なことをすくっていくと、ひょっとしたら私は今、笑いながら毎日過ごせているのかもしれない。

 

川上未映子さんは、日経DUALの川上未映子のびんづめ日記(連載バックナンバー) | 日経DUALが好きで読んでいたのだけど、本を手に取るのは初めて。過去や未来をウダウダさまよっていた私を、今に引き戻してくれた。いい出会いだった。また読みたいなぁ。

 

きみは赤ちゃん (文春文庫)

きみは赤ちゃん (文春文庫)