ママ、これ作りたい。そういってその本を広げたのは、もう3回目ぐらいだった。
学校の図書館で借りられる本は一度に2冊まで。そんなに本を読むのは好きじゃないムスメが、その本は好きなようで何回も借りてきていた。
だってかわいいから。
そういってページをめくって、作りたいのはこれとこれと。と選んでいく。
うーん、マシュマロはないなぁ。チョコは?食べるぶんしかない。サツマイモは?ごめん、ない。なんか簡単に作れて材料があるやつがいいんじゃない?といったらじゃあこれ!と選んだのはクッキーだった。
いいじゃん。たまご小麦粉バター砂糖と塩。これなら材料もあるよ。
じゃあ、おけいこから帰ったら一緒に作ろっか。
うん!約束〜。
ちょうどその日は日曜日だったのだけど、私は週明けの社内発表の資料作りが終わっていなくて、ムスメは午後から習いごとで、普段より忙しめの日だった。だけどせっかく彼女がやりたいと言ってきた気持ちにダメ!と言いたくなくて、帰宅後の17時台にクッキーづくりを無理やりねじこんだ。
予定はいれちゃえばなんとかなるもので、その時間までに急いで資料づくりを終わらせて、ムスメは習い事にいって、それぞれやらなきゃいけないことは片付けた。えらいぞ私たち!
その日の夕飯は鍋。白菜を切る夫の横で、いざ、クッキーづくりの始まり。弟はYou Tubeに夢中。
まずは材料を冷蔵庫からとって計るところから。私はもっぱら本とにらめっこしてあれ取ってこれ計って、という係。ムスメはバァバのエプロンをきゅっとしめて私が全部やるから!と大張り切り。
バターを柔らかくするときはレンジとにらめっこして、泡だて器で混ぜるときはしっかりボールをおさえて…。なかなか柔らかくならないねぇ、これでいいのかなといいながらぐるぐると混ぜていく。泡だて器にみちっとくっついてしまうバターを見て、やっぱり電動のが良かったね、と言ったらいやいやそれじゃ美味しくならないよ!という。どこで覚えてきたのよそんな根性論。
そんなおしゃべりをしつつ、卵黄をいれてぐるぐる回し、小麦粉と砂糖をふるったものを切るように混ぜる。この切るように混ぜる、って伝えるのがむつかしい。サクッと!こういう感じで!と身振り手振りで伝えつつ、生地をまとめていく。
小さいもみじみたいな手だったはずが、生地をまとめる手を見ると、ちょっぴり指が長くなって頼もしい感じになっていた。夫譲りの、いつもじんわりとあったかい手。
いつの間にか大きくなっちゃったなぁ。と思う母の横で、生地をラップに包んだムスメがもういい?と声をかけてきた。
いや、ここから1時間以上冷蔵庫で生地を寝かすんだよ。だから続きはお風呂入ってごはん食べた後にしよう。
そうなんだぁ…。とちょっぴりうらめしげなムスメをなだめつつ、速攻でお風呂に入ってお鍋を食べる。この日はヒガシマルのおだしを使ったお鍋。無限に食べられる大好きな味。
ねぇ、クッキーの型抜き、ぼくもやりたいなぁ。
You Tubeに夢中でこっちなんかちっとも気にしてなかった弟が、鍋をハフハフ食べながらしれっという。えー。だめ。ムスメはムスっとした顔になる。そりゃそうだよねぇ、ハイライトだけやろうっていうのはずるいよねぇ。
でもさぁ。おじや作りはやってもいいから。といってなんとか収まる。なぜか二人の間ではおじや作りはいつも取り合いだ。
夫と弟が作ってくれたおじやをお腹いっぱい食べて、ほぅ、とひと息つく暇もなく、ママやるよ!クッキー!とムスメにせかされる。
そうだったそうだった。ここからがハイライト。
お菓子作りの道具が入った棚から、パンこね用のでかい板(夫が買った)とクッキー型、模様をつけるローリングピンをいそいそと準備する。
さっきダメ!と言われたのにもめげずに、ちゃっかり生地の前に立っている弟。やる気まんまん。
冷蔵庫からひんやりと固くなった生地を取り出す。ありゃちょっと冷やしすぎたかね、といいながら延べ棒で伸ばしていく。
ローリングピンを使うなら、この最初のちょっと固めの頃合いが良いと思う。いい薄さになった生地の上でコロコロと転がすと、綺麗な模様がつくから。あんまり生地が柔らかいタイミングだとピン側に生地がひっついてしまい、うまくいかない。なんだか外国のお土産のクッキーみたいなお洒落な模様。大きめのクッキーにしたいから、コップで丸く抜く。いいねぇ。いいねぇ。と言い合う。
ローリングピンは、ここのお店で買いました。人と被らない、洒落たものをお探しの方におすすめです。
次は、これ!そういってムスメが選んだのはすみっコぐらしの抜き型。顔の線もつけられるタイプのやつ。とかげの口がみよーんとなってしまい、大笑いしながら抜く。
全部私がやるんだからねっ。と言っていたはずの姉だったけど、気づいたら弟と2人できゃいきゃい言いながら型抜きしまくっていた。
最後はプレーンな星やハート。少ない分量でも気軽に抜けるのがいい。ようじで模様を書いたり、ストローで穴を開けたりするのも楽しい。
夫が頃合いをみてオーブンを予熱しておいてくれたおかげでタイムロスなく焼き工程へ。ここから160度で12分。
そして夜の21時すぎ。ふんわりと美味しそうな香りが漂ってきた。
ごはんの前にお風呂を済ませた子どもたちはパジャマ姿だし、普段この時間はおやつはNG。でも今日は特別。
ちょっとこげちゃったけど(ジンジャーマン首がもげてるし…)焼きたてであつあつのクッキーをあちち、と言いながら食べる。バターが美味しい。背徳の味だあ〜。
夕飯の支度から片付けから全部やってくれた夫にもクッキーをあげて、美味しいねぇ。サクサクしてる。バターがいい。と二人で喋りながら食べていたら、その間に姉と弟は全部たいらげていた。食べすぎたー。口の中が甘い。そりゃそうだよ!
その後、これバァバにあげるの。と言って一枚だけラッピングしたクッキーを見せてくれた。次の日の朝、バァバはとても喜んで、気を良くした弟は「また、つくってあげるからね!」と言って、姉はイヒヒ、と笑っていた。
冬のお休みの日は、こういうクッキーづくりが似合う気がする。21時すぎのクッキーづくり、おすすめです。